mint.gif 第10回
ザ・ドラえもんズ



 「劇場版ドラえもんは併映作に要注意」というのは、シンエイ動画のマニアにとっては常識である。
 今や東宝のドル箱シリース、毎年安定した集客を確保しなければならないという責任を負い、制約も多そうな長編ドラえもんに比べると、併映の短編作品の方は、新進気鋭の演出家たちがのびのびと作っているように感じられるし、実際、傑作も多いのだ。
 例を上げれば、原恵一の「エスパー魔美/星空のダンシングドール」「ドラミちゃん/アララ少年山賊団」、本郷みつるの「チンプイ/エリさま活動大写真」「21エモン/宇宙いけ!裸足のプリンセス」などなど。
 さてここ数年、ドラ映画の併映役を務めているのは「ザ・ドラえもんズ」シリーズである。「ドラえもんズ」は藤子・F・不二雄自身による原作漫画は存在しない、ある意味オリジナルなシリーズなので、その分、内容的な自由度も高いようだ。  今回のこのコラムでは、この「ザ・ドラえもんズ」を取り上げてみよう。

1.序章〜2112年ドラえもん誕生
 さて「ザ・ドラえもんズ」とは、ドラえもんのロボット学校時代の同級生で、同じ猫型ロボットの仲間たち。アメリカのドラ・ザ・キッド、中国の王ドラ、アラビアのドラメッドIII世、スペインのエル・マタドーラ、ロシアのドラニコフ、ブラジルのドラリーニョ、それに日本のドラえもんを加えた7人の事である。
 彼らのアニメ初登場は95年度の作品「2112年ドラえもん誕生」である。ただしこの時の主役は、まだ黄色くて耳もあった若い頃のドラえもんで、ドラえもんズ達はゲスト的に出演するのみ。
 ところで、この作品におけるヤングドラは、恋もするし冒険するし喜怒哀楽も激しいし、実に魅力的なキャラクターだ。
 後期の「ドラえもん」本編では、のび太の保護者的役割を負わされているため、どうも説教臭く、ジジむさいキャラクターになりがちなドラえもんであるが、初期原作では「オバQ」や「モジャ公」的なテイストを持った、ちょっと不思議で怪しいところもある、ギャグメーカーでもあったのだ。
 「ドラえもん誕生」は、久々に元気なギャグキャラクターとしてのドラえもんを堪能できる、貴重な1本である。

2.傑作の誕生〜ドラミ&ドラえもんズ
 さて翌96年、アニメ史上に残る究極のノンストップアクションムービーが誕生した。ドラえもんズをメインにフューチャーして作られた最初の作品「ドラミ&ドラえもんズ/ロボット学校七不思議!?」である。
 とにかくこの作品、わずか30分の中に詰め込まれた内容の情報量がハンパじゃない。異常に早いテンポ、めまぐるしい展開、アクションの連続。まさに「ジェットコースターアニメ」と呼ぶに相応しい。年期の入ったアニメマニアでも、一度観ただけじゃ総てを把握するのは不可能なくらいのスピード感と画面の密度!
 作画的にも「工具の鉄人ロボ」「パイプオルガンロボ」「合体跳び箱ロボ」等の巨大ロボットの動きが絶品で、作監高倉佳彦氏をはじめ、原動画陣の仕事ぶりが素晴らしい。やはりアニメは動いてこそ華!
 またキャラクター的にも、今までの作品では優等生的な役割しか与えられなかったドラミが、この映画では容赦無く壁にぶっつけられるわ、ブス呼ばわりされるわで、コメディエンヌとしての魅力全開だし、彼女の「恋愛」が描かれたのもこれが最初で最後ではあるまいか。
 さて、今回メインを張ったドラえもんズ達だが、ドラえもんが本来持っていた「正義漢」「真面目」「子供っぽい」「おっさんくさい」「不思議」などの様々な部分が、6人の派生キャラクターに割り振られているのが興味深い。
 前述したように「保護者ドラえもん」が固定する際に、切り捨てられたドラえもんのキャラクターとしての「別の可能性」が「ドラえもんズ」で復活しているのだ。

3.悪のドラえもん登場〜怪盗ドラパン謎の挑戦状
 97年の作品は、ドラえもんズ第2弾「怪盗ドラパン謎の挑戦状」である。
 この作品も前作に引き続き、演出・作画のテンションが異常に高い。ドラえもんズの中でも主役として使いやすいキッドや王ドラではなく、一番おっさんくさいドラメッドと、大ボケなドラリーニョの凸凹コンビをメインに持ってくる構成の妙。巨大迷路での水を使った疾走シーン。宇宙空間でのアチモフロボVS合体ドラえもんズの大決戦。ヒロイン・ミミミの可憐さ(デザインは全然藤子キャラじゃないんだけど・・・)など、見所満載。
 キャタクター的には、初の「悪のドラえもん」怪盗ドラパンに注目したい。長期に渡るドラえもんシリーズの中で、実は「ブラックドラ」的なキャラクターはドラパンが初めてなのだ。(もちろん、本当の悪人では無いのだけど・・・)

4.そして最新作〜ムシムシぴょんぴょん大作戦
 ドラえもんズシリーズの最新作は、今年の春に公開された「ムシムシぴょんぴょん大作戦!」である。ドラえもんズのメンバーが、ムシ型ロボットに乗って大レースを繰り広げるといった内容。ただし本作は、前2作に比べて時間が短い為(約15分)、やや内容的には薄くなってしまったのが残念。今回の主役・ドラニコフがヤゴロボットを選んだ時点で、オチが読めてしまうのもちと痛い。
 それでも演出・作画はやはり一級品で、クライマックスのヤゴロボットがトンボに変形、そして猛スピードでゴールに向かうシーンの爽快感はさすがである。

 もしあなたが、このシリーズを「子供向け」とあなどって観ていないのなら、アニメファンとしては人生の損失である。今からでも遅くない。レンタルビデオ店に行って、ぜひ借りて観てほしい。ドラえもん物なら、たいがいの店のキッズコーナーに置いてあるハズだ。

 ・・・さて、この「ドラえもんズ」シリーズの監督は米谷良和氏。
 そう、かの「勇者王ガオガイガー」の“米たにヨシトモ”監督その人であ る。

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