ed.karasawa.gif0010/10 『ポップ・アジア』に答える
 

<NEW ASIAN ENTERTAINMENT LEVIEW>(『ポップ・アジア』NO.13)



 モノカキとして、自分の書いたものに対して加えられた批判に対する正しい解答は、次回作で作品として提示することが正しいありかただろう。批判のいちいちに直接反論することは大人げない、同人誌的行為とされていることは百も承知のつもりである。第一、いちいちそんなことをしていたひには時間がいくらあっても足りはしない。

 ただ、その批判が前向きのものであるならともかく、まったくの方向違いの部分に向けられ、また、モノカキとしてのこちらのスタンス自体にそれがかかわっている場合、ものを書いてメシを食っている職業として、営業妨害になりかねない。反論する権利は十分にあると思う。今回はいくぶん従来のコラムとスタイルが違ってしまうが、僕の著書に向けられた中傷に対し、答えていきたいと思っている。しばらくおつきあい願いたい。



 その、批判された著書というのは、僕が今年の6月にKKベストセラーズ社から出版した、『アジアン・コミック・パラダイス』という本。タイの露店で売られているB級、C級のホラーコミックのゲテ的味わいと、それがタイにおけるほとんど唯一のオリジナル・コミックスであるという事実に注目して出版した、海外コミック紹介・評論本である。マイナーでマニアックなネタなので心配だったが、出版してすぐに阿部幸弘、いしかわじゅんなどの各氏が書評で取り上げてくれて、新宿紀伊國屋書店のコミックコーナーでは推薦図書扱いをしてくれ、好調な売れ行きを示している。

 そんな中、マンガ評論とはちょっと異質の、『ポップ・アジア』という雑誌から、写真掲載の許可を求める依頼がきた。読んでいただけばわかるが、僕はこの著書の中で、単にB級コミックを楽しむばかりでなく、アジアのコミックシーンと日本のそれとの関係にも筆を及ぼしている。担当編集者も僕も喜んだものだった。もちろん、音楽系の雑誌にマンガ評論本がどう受け止められるか、という興味もあった。
 ところが、それからしばらくして、友人から、
「お前のあの本を、えらく酷評した文章が『アジアン・ポップ』に載っていた」  と教えられて、あわてて買って読んでみて驚いた。
 驚いたのは、それが酷評だったからではない。悪口を言われたくらいで腹を立てるほどこちらもウブなモノカキではない。それに、言われたほど酷評とは思わなかったのである。実際、僕が巻末に書いたアジアン・コミック論に関しては、評者の松村洋という人は
「共感できる良いことも言っている」
 と言ってくれている。この評の中で松村氏が批判しているのは、まずこちらのアジア文化に対する認識不足、そして本のスタイルなのである。僕がこれに対し反論しなければならない、と思ったのは、ここに理由がある。
 内容に対する批判であれば、それへの返答は冒頭にあるように次著でなすべきだろう。しかし、彼が問題にしているのは、僕の本作りのスタンスである。そして、それは大きな無知と誤解によった批判のように思えるのである。
 以下、そのいちいちの批判に対して答えていく。

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